生産技術の藤沢です。
車載向けの電子部品メーカーで22年、基板のポッティングやコネクタのシール塗布の工程を立ち上げてきました。
いまは独立して、中小の製造業さんで接着・塗布工程の改善をお手伝いしています。
設備の選定に呼ばれると、必ず一度は聞かれる質問があります。
「やっぱり国産にしておいたほうが無難ですよね」というものです。
先に結論を書きます。
国籍そのもので選ぶのは筋がよくないと思っています。
ただし国内メーカーで得られやすいものは、確かにあります。
そこを分けて考えないと選定を外します。
カタログで比べられることと、比べられないこと
ディスペンサのカタログには、どのメーカーもだいたい同じ項目が並びます。
厄介なのは、選定で効いてくるのが載っていない側だということです。
| 比較したい項目 | カタログで分かるか |
|---|---|
| 吐出量レンジ・使用可能粘度 | 分かる |
| 計量方式(プランジャ式、ギアポンプ式など)・混合比 | 分かる |
| 自社の材料で安定して打てるか | 分からない |
| 5年後に消耗品と補修部品が届くか | 分からない |
| トラブルのときに人が来るまでの時間 | 分からない |
現場で転んだのは、いつも下の3行のほうでした。
仕様表の粘度レンジには余裕で収まっているのに、フィラー入りの材料が沈降して吐出量がじわじわ変わっていく。
夏と冬で塗布量のばらつき方が変わる。
こういう話は、自社の材料を実際に流してみるまで出てきません。
「国内メーカーだから安心」は本当か
まず押さえておきたい事実があります。
ディスペンサはもともと海外から日本に入ってきた装置です。
国内草分けの岩下エンジニアリングの沿革でも、輸入販売の開始は1972年、自社開発品の製造販売はその3年後です。
現在は海外メーカーの多くが日本法人や代理店網を持っています。
「海外製はサポートが遠い」と決めつけると、選択肢を無駄に狭めます。
一方で、国が日本の強みをどこに置いているかは参考になります。
内閣官房のAIロボティクスに関する関係府省庁連絡会議がまとめた戦略では、日本の強みとして「部品・素材・装置のサプライチェーン」「実装・運用ノウハウ」「品質・安全性を確保した設計思想」が挙げられています。
評価されているのは装置そのものより、それを現場で動かし続ける力のほうだ、という整理です。
だとすれば見るべきは国籍ではなく、その力が自社の工場に届く距離にあるかどうかになります。
私が選定で必ず確認している3つのこと
- 自社の材料で実液テストができるか。テストルームがあるか、デモ機を貸してもらえるか
- 保守が会社の仕組みに入っているか。ISO9001の適用範囲にアフターメンテナンスまで含まれているかは、公開情報で確かめられます
- 長く使う前提の設計と体制になっているか
3つ目について補足します。
近畿経済産業局が大阪府守口市のディスペンサメーカー、株式会社ナカリキッドコントロールを取材した記事に「ディスペンサは一つの現場で長く使われる」という一節があります。
私の実感も同じで、担当したラインでは10年選手が珍しくありませんでした。
装置寿命が長いということは、部品供給が切れた時点でラインが止まるということです。
需要側の動きも見ておきます。
日本接着剤工業会の統計によれば、自動車向けの接着剤出荷量は2023年の37,684トンから2025年には51,373トンまで増えています。
使う量が増えるほど、塗布精度と稼働率が歩留まりに跳ね返ってきます。
自社の材料がどの系統の機種に当たるのか整理したいときは、ディスペンサの塗布方式別に機種が並んだ一覧ページのような資料が役に立ちます。
方式ごとに吐出量と対応粘度を見比べると、候補がかなり絞れます。
なお同じ記事で近畿経済産業局は、この会社を「小型・大型、1液・2液タイプの総合的なラインアップをそろえる国内メーカーは同社だけだ」と紹介しています。
そういう会社が国内にあることは、知っておいて損はありません。
まとめ
- カタログで比べられるのは入口まで。効いてくるのは載っていない側
- 「国内か海外か」ではなく、保守と実液テストが自社の工場に届く距離にあるかで見る
- 装置は長く使う。5年後10年後の部品供給まで含めて、契約前に聞いておく
選定でいちばん確実なのは、自社の材料を持ち込んで実際に打ってみることです。
カタログを読み込む時間の半分をテストの段取りに回すほうが、答えは早く出ます。



