「エステティシャンのやりがいは何ですか?」と聞かれたら、多くの人が「お客様からのありがとう」と答えると思います。
私も現役のころは、まったく同じ答えを返していました。
はじめまして、美容業界のキャリアについて書いている三浦佳織です。
エステティシャンとして12年働き、店長とトレーナーも経験しました。
その後、美容業界専門の人材紹介会社でキャリアアドバイザーを6年務め、いまはフリーランスで記事を書いています。
アドバイザー時代、「最近やりがいが分からなくなった」という相談を何度も受けました。
話を聞くと、お客様に感謝されていないわけではないのです。
感謝はされている。
それでも気持ちが続かない、という人がとても多かったのを覚えています。
この記事では、「ありがとう」のほかにエステティシャンが手にできるやりがいを、公的な資料や業界の調査を交えながら整理します。
やりがいを見失いかけている人や、これからエステの仕事を目指す人の参考になればうれしいです。
目次
「ありがとう」だけを支えにすると苦しくなる理由
お客様からの感謝は、この仕事のいちばん分かりやすい報酬です。
ただ、感謝の量は自分では決められません。
予約が少ない日もあります。
体調が悪くて口数の少ないお客様もいます。
新人のうちは、そもそも担当できるお客様が限られています。
感謝だけをものさしにしていると、こうした日が続くたびに「私は役に立っていないのかな」と考えてしまいます。
私が相談を受けた人の多くは、まさにこの状態でした。
業界の調査を見ても、エステティシャンの満足度は高いとは言えません。
リクルートのホットペッパービューティーアカデミーが公開した「美容サロン就業実態調査(2026年)」は、美容師やネイリストなど6職種で働く3,170人(うちエステティシャン500人)に、2026年2月にインターネットで聞いた調査です。
「あてはまる」と「どちらかというとあてはまる」を合わせた割合は、次のとおりでした。
| 質問項目 | エステティシャン | 6職種全体 |
|---|---|---|
| 仕事そのものに満足している | 54.4% | 60.9% |
| 仕事を通じて「成長している」という実感を持っている | 50.4% | 56.2% |
| 職場の人間関係に満足している | 54.4% | 60.6% |
どの項目も、エステティシャンは6職種全体より6ポイント前後低くなっています。
成長実感は前年から4.0ポイント下がっていました。
半分近くの人が、成長している手応えを持てていないわけです。
感謝の言葉をもらっていても、この手応えがないと気持ちは続きにくいと私は考えています。
感謝のほかに見つけられる4つのやりがい
ここからは、「ありがとう」以外のやりがいを4つに分けて紹介します。
どれも、私自身が現場で支えにしていたものです。
技術が上達していく手応え
入社したばかりのころ、フェイシャルの手技がぎこちなくて、先輩に何度も手の当て方を直されました。
半年ほどたって、同じお客様から「最近、手の当たりが変わったね」と言われたとき、感謝されたときとは別のうれしさがありました。
技術の上達は、お客様の反応とは関係なく自分で確かめられます。
施術にかかる時間が短くなった、肌の状態を見て判断できることが増えた、といった変化は自分がいちばんよく分かります。
昨日できなかったことが今日できる、という手応えは、予約が少ない日でもなくなりません。
エステは学ぶ機会が多い仕事でもあります。
先ほどの調査では、勤務先で研修やセミナーを受けているエステティシャンは52.2%で、6職種全体の40.9%を上回り、6職種の中でいちばん高い割合でした。
資格にも段階があります。
エステティシャンに国家資格はありませんが、日本エステティック協会の資格・検定のように、認定エステティシャンから認定上級エステティシャン、さらに上の資格へと、実務経験を積みながら進める仕組みがあります。
目標が一段ずつ見えていると、技術の伸びを実感しやすくなります。
数字で成果が見えること
指名の数、コースを続けてくれるお客様の数、お店の目標の達成。
エステの仕事は、成果が数字で見えやすい仕事です。
同じ調査で、エステティシャンが働き始めて3年目までに身につけたスキルを聞くと、「売上や数字に対する意識」を挙げた人が29.1%いました。
技術(68.4%)や接客スキル(63.2%)ほどではありませんが、数字と向き合うことも仕事の一部になっています。
私は、指名が月に数件だった時期から、少しずつ増えていく過程が励みになりました。
数字は、言葉にならない評価を目に見える形にしてくれます。
ただ、数字には負担になる面もあります。
同じ調査の別の設問では、最初の職場を辞めた理由に「ノルマが厳しかった」を挙げた人が、エステでは23.7%でした。
6職種全体の8.3%と比べるとかなり高い数字です。
数字をやりがいにできるかどうかは、職場の目標の立て方に大きく左右されます。
「達成したら評価される」のか、「未達だと責められる」のかで、同じ数字でも意味がまったく変わります。
後輩が育っていく喜び
トレーナーになって初めて教えた後輩が、ひとりで施術を任されるようになった日のことは今でも覚えています。
自分のお客様に喜ばれるのとは違う、少し誇らしい気持ちでした。
後輩を育てることは、エステティシャンのキャリアの中で正式に評価される経験です。
厚生労働省がまとめたエステティック業の職業能力評価基準には、日本エステティック協会などと作ったキャリアマップが載っています。
そこでは、次の段階へ進む「レベルアップのカギ」として、次のような経験が並んでいます。
- 技術の幅を広げ、カウンセリングに慣れる
- 上位資格へ向けて勉強やトレーニングをする
- 後輩を指導する、スタッフ教育を担う
- 売上の拡大に貢献する
- 複数の店舗で店長を経験する
人を育てることが、技術や売上と並んで評価の対象になっているわけです。
自分の施術だけで成果を出す段階から、チームで成果を出す段階に移ると、やりがいの種類も変わっていきます。
正当に評価されること
4つ目は、がんばりを会社に正当に認めてもらえることです。
厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」は、仕事に熱意を持って打ち込めている状態(ワーク・エンゲイジメント)と、職場の取り組みとの関係を分析しています。
データは労働政策研究・研修機構が2019年に行った調査です。
この分析では、「人事評価の公正性・納得性の向上」や「能力・成果等に見合った昇進や賃金アップ」に取り組んでいる会社で働く人ほど、エンゲイジメントが高い傾向が出ています。
一方で、「フィードバックによる動機づけ」は、統計的にはっきりした関係が確認されませんでした。
声をかけて褒めるだけでは足りず、評価の仕組みそのものに納得できるかどうかが大事だということです。
キャリアアドバイザー時代も、転職を考える理由として「何を基準に評価されているのか分からない」という声をよく聞きました。
同じ分析では、働く人の側の認識として「職場にロールモデルとなる先輩がいる」ことも、エンゲイジメントの高さと関係していました。
あの人のようになりたいと思える先輩が近くにいると、日々の仕事の先にある自分の姿を想像しやすくなります。
評価の仕組みと身近な目標、この2つがそろっている職場は、やりがいを保ちやすいと私は考えています。
お客様が主役の仕事で、自分が主役になる日
正当な評価の分かりやすい形のひとつが、社員の表彰です。
最近、印象に残った例を紹介します。
たかの友梨が社員の晴れ姿を紹介したInstagram投稿は、2022年7月に東京の明治座を貸し切って開いた「優秀社員表彰式」の様子を伝えるものです。
ドレス姿のエステティシャンたちがステージに並ぶ動画に、「お客様が主役のエスティシャンですがこの日は彼女達が主役です」という言葉が添えられていました。
この一文を読んだとき、現場にいたころの自分を思い出しました。
エステティシャンは、毎日お客様を主役にする仕事です。
だからこそ、自分が主役として拍手を受ける日があることの意味は大きいと感じます。
業界専門メディアのエステティックジャーナルによると、2026年2月にも明治座で「優秀社員表彰式2026」が開かれています。
記事で紹介されていた賞の名前と、そこから私が読み取った評価のポイントを表にまとめました。
| 賞の名前(記事に載っていたもの) | 名前から読み取れる評価のポイント(筆者の解釈) |
|---|---|
| 新人賞 | 入社して間もない人の成長 |
| 努力賞 | 結果だけでなく取り組みの過程 |
| 協力賞 | チームを支える働き |
| グッドワーキングマザー賞 | 子育てと仕事の両立 |
| 優秀ジュニア店長賞・優秀店長賞・優秀リーダー賞 | 店舗やチームをまとめる力 |
| ベストモアカスタマー賞 | お客様の支持 |
最高賞は「ゴールデンリリー賞」という名前だそうです。
私がいいなと思ったのは、売上の成績だけで決まる賞ばかりではない点です。
新人の成長、チームへの協力、子育てとの両立まで、それぞれに名前のついた賞があります。
先ほど紹介した4つのやりがいのうち、技術・数字・育成・評価のどれで力を発揮しても、光が当たる可能性があるということです。
もうひとつ、表彰式には受賞者以外にとっての意味もあると思います。
同じ職場の先輩がステージで名前を呼ばれる姿を見ると、「次は私も」という具体的な目標が生まれます。
労働経済の分析にあった「ロールモデルとなる先輩」が、目に見える形で示される場でもあるのです。
同社の採用サイトでは、新卒の募集要項の福利厚生に「優秀社員表彰制度」が明記されています。
正社員になると、資格手当や技術給、目標達成時の達成賞などがつく仕組みも説明されていました。
ただし、各賞の選考基準は公開されていません。
こうした制度が気になる場合は、面接や説明会で「どんな基準で選ばれるのか」を聞いてみるのがいちばん確実です。
やりがいを見失いかけたときに見直したいこと
最後に、やりがいが分からなくなったときに試してほしいことを2つ紹介します。
1つ目は、自分のやりがいを4つの視点で棚卸しすることです。
紙に書き出すだけでも、思っていたより多くのものが見つかります。
- 半年前より、できるようになった技術はあるか
- 指名や継続のお客様は、少しでも増えているか
- 自分が教えたことで、できるようになった後輩はいるか
- 自分のがんばりは、会社の評価にきちんと反映されているか
4つ目だけが空欄になる人は、仕事そのものではなく、評価の仕組みと合っていないのかもしれません。
その場合は、職場を見直すことも選択肢に入ります。
2つ目は、転職や就職を考えるときに、評価の仕組みを具体的に確認することです。
面接では、次のような質問をしてみてください。
- 「表彰制度や評価の基準について教えていただけますか」
- 「技術や資格は、給与にどのように反映されますか」
- 「店長やトレーナーになった方は、入社何年目くらいが多いですか」
- 「後輩の指導は、評価の対象になりますか」
キャリアマップでは、最初の段階を1〜3年、その後の段階を3〜4年ずつとしています。
ただ、これはあくまで目安で、本人の経験や職場によって変わると明記されています。
年数だけで焦らず、自分がどの段階にいて、次に何を積めばいいのかを確かめることが大切です。
まとめ
お客様からの「ありがとう」は、エステティシャンにとって本物のやりがいです。
ただ、それだけを支えにすると、感謝が少ない日に気持ちがもたなくなります。
感謝のほかにも、やりがいは見つけられます。
- 技術が上達していく手応え
- 指名や目標達成など、数字で見える成果
- 後輩が育っていく喜び
- がんばりが正当に評価されること
どれも、お客様の反応に左右されずに自分で確かめられるものです。
やりがいが分からなくなったときは、自分に足りないのが「手応え」なのか「評価」なのかを分けて考えてみてください。
私は12年の現場で、手応えと評価の両方がそろった時期がいちばん長く続けられました。
この記事が、あなたが次の一歩を考えるきっかけになればうれしいです。



